いつか帰るところ
泣きたいだけ、泣けばいいのにそれすら出来ないお前に俺は何をしてやれるのだろう
そのいつもよりずっと色素の薄い頬に手を当てれば、若い林檎の色をした瞳が掌の持ち主を向く。
向かい合う男の青い目に浮かぶのは悼みの色。
「お前が悪いわけじゃない、って俺は思ってるから」
囁かれる声にもう一人の男の唇は小さく歪む。
「お前に慰められるいわれなど無い」
男の思いは無残に切り捨てられるものの、彼はそんなことを物ともしない口ぶりで「うん」と頷く。
「俺はお前に慰められるほど落ちぶれてはいない」
一見すればそれは語り合っているように見えるけれど、実際その言葉はまるで自分に言いかけているようで。
だから男は
「いつだって待ってるからな」
もう片方の掌で彼の髪を撫で、小さく笑った。
何処か違う所を見ている彼の戻ってくる場所でありたいと願う